バッハの森通信 第87号 2005年4月20日発行

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巻頭言

 私塾・バッハの森

各自が「私」を自由に表現する学びの場

 4年前から、「教養講座:聖書を読む」というプログラムを、週1回、開いてきました。ところが、先日、参加者の一人が、「教養講座」という名称はこの会に相応しくない、と突然言い出しました。おかげで、聖書をそっちのけにして、出席者全員が「教養」とは何かという議論を始めました。ちなみに、この種の脱線は、この会ではよく起こる現象です。
 なぜ相応しくないか、というと、現在、一般社会では、「教養」という言葉で「広く浅い」知識を意味しているが、ここでは、聖書を「深く」学んでいる、と言うのです。これに対して、私は、「教養講座」という名称は、大部分の日本人が、「聖書」はキリスト教の宗教書だから自分とは無関係だ、と考えている現状を考え、キリスト教よりもっと広い視点から「教養書」として聖書を読む、という意味を籠めて名付けた、と説明しました。しかし、「教養」には「軽チャー」というイメージがつきまとっているから止めた方がいい、という反論もあって、私の方が断然形勢不利でしたが、それでは「教養」に代わる良い名称があるかというと、誰も思いつかないまま、議論は終わりました。

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 バッハの森の活動を、何と表現して世間一般に分かってもらえるか、これは、バッハの森創設以来、20年間、悩んできた古くて新しい問題です。これまで、「教養」は、それほど気にしていませんでした。だから、毎週土曜日夕方に開く「J. S. バッハの宗教音楽」にも、「教養音楽鑑賞シリーズ」という説明をつけてあります。
 ここで「教養」は、「総合的」を意味します。この言葉によって、世間一般の余りにも狭い「音楽」とは違って、バッハの森では、音程、テンポ、リズムを正確に刻む「音」だけではなく、歌詞とその背後にある文化と思想の総合的表現として「音楽」を学んでいる、ということを伝えているつもりです。
 この考えを「宗教音楽」という言葉で表すことができるでしょうか。でも「宗教」は危ない言葉です。それでは「教会音楽」と呼べばいいでしょうか。「教会」もまた誤解を生む言葉です。バッハの森は、絶対に教会ではありませんし、宗教団体でもありませんから。
 しかも「研究所」でも「学校」でもありません。困り果てて、昨年から「私塾・バッハの森」と名乗ることにしました。「私塾」には、自由に教え自由に学ぶ機関というニュアンスがあるので、「教養音楽」であれ「教会音楽」であれ、ここでは独自の解釈で「音楽」を学んでいるということを伝えられるかもしれない、と考えたからです。
 但し、「私塾」には、主宰者が好き勝手をする学校というイメージもあるので困っています。「私塾・バッハの森」は、主宰者の「私」だけを意味していません。ここでは、参加者全員が、各自の「私」を自由に表現することが期待されているのです。

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 去る3月20日に開いた、バッハの森の創立20周年記念コンサートでは、イェス・キリストの「受難物語」を歌詞とするコラール:「祝福賜い、悪事なさぬ主は」に従って、音楽を演奏し、宗教画のスライドを映写しながら、物語を朗読しました。参加者は、出演者15名、その他18名の計33名でした。世間の尺度に従えば、少数の聴衆しか集められなかった失敗したコンサートなのですが、不思議なことに、終わった後で参加者は全員、共通の充足感に満たされ、大成功した気分になりました。それは、演奏者と聴衆が歴然と別れている一般のコンサートとは違って、参加者全員が一場面ごとに大きな声でコラールを歌い、各自が受難物語の劇的な展開の中に感情移入したために起こった高揚感でした。
 まさにこれが「私塾・バッハの森」のコンサートなのです。あなたも、あなたの「私」を表現するために、「私塾・バッハの森」に参加なさいませんか。(石田友雄)

A P P E A L/アピール/訴え・願い・募る

バッハの森を存続するための4つの提案
山になるまでみんなで持ち寄ろう

 バッハの森は、今年、創立20周年を迎えました。一口で20年と申しますが、生まれたばかりの赤ちゃんが成人に達する歳月です。こう考えるとその長さが分かります。ところが、この間に、人間は成長しますが、建物は老朽化します。この当たり前のことに気付き出したのは、何とも迂闊な話ですが、ここ数年前でした。台風が来て屋根の一部が飛んだり、地震で壁に亀裂が入ったり、あちこちで雨が漏り出したからです。
 いくら高い理想を掲げ、その実現に賛同する仲間に恵まれても、集まる場所がなくては、絵に描いた餅です。それも、ただの集会所ではありません。バッハの森のテーマである、バロック時代の教会音楽を学び、演奏するためには、重要文化財と言っても過言ではない、ユルゲン・アーレントが建造したパイプオルガンと、それが設置されている奏楽堂、それに付随する建物と、それが建っている土地が必要です。
 ところが、バッハの森の通常会計の収支は、この20年間、常に活動するだけでトントンになり、土地・建物を維持するための積み立てをする余裕が、ほとんどありませんでした。そこで、創立20周年を期して、バッハの森の土地と建物を存続するために「アピール」することにしました。
 「アピール」という言葉を英和辞典で調べると、(助力、支持、慈悲などを求めて)「哀願する」、(理性などに)「訴える」、(募金を)「募る」というような意味があります。このどれにもあたる意味で「アピール」いたします。決して単なる「募金」ではありません。それどころか、一般に「募金」と言われていることはしないつもりです。
 面白いことに、「アピール」には「魅力」(例えば、セックス・アピール)という意味もあって、意味深長な言葉です。勿論、「セックス・アピール」は論外ですが、バッハの森には間違いなく、「知的魅力」「精神的魅力」「音楽的魅力」、その他諸々の「魅力」があると自負していますが、いかがでしょうか。
 そこで改めて「アピール」いたします。ただし、決して無理なお願いをする気は毛頭ありません。無理のない、いろいろな可能性を考えみました。この中に、あなたにできそうなことがあったら、是非、実行してみてください。そもそも、「自由意志」こそ、バッハの森の創立精神です。従って、参加するのも貢献するのも、すべては各人の「自由意志」に基づく行動であることを前提にしています。

必要額は1000万円

 それにしても、具体的な目標を提示する必要があります。そこで、先ずバッハの森が所有する土地と建物を存続するために、さし当たってどのくらい必要なのか、という概算をお知らせしましょう。
 土地は4区画(計423坪)ありますが、そのうち1区画は自己所有地なので、計算から除外します。残りの3区画には、期限20年の地上権が設定されています。そのうち2区画の再契約は終わったので、これも計算から除外します。残る1区画(125坪)の契約更新の期限は2006年4月で、更新料は100万円です。
 次にバッハの森の建物は、7年おきの外壁塗装と20年に1度の屋根の葺き替えが必要です。5棟ある建物のうち、管理棟は、最近、石田家が個人的に処理したので計算から除外します。奏楽堂の塗装と屋根の葺き替えは、一昨年緊急を要する状態になったので、とりあえず不足分を(石田家から)借入して済ませました。
 この借入金返済と残りの3棟の外壁塗装と屋根の葺き替えに、約900万円かかります。これらの建物の外壁を塗装したのは8年前で、今年で築後20年たちますから、すべての建物の外壁塗装と屋根の葺き替えが“適齢期”に達しています。
 このようなわけで、今年度末までに、土地と建物のために約1000万円必要です。さて、そのための積み立て金が100万円あり、一般会計から約100万円の収入が見込まれるので、予定できる自己資金200万円を差し引くと、実際には800万円の不足ということになります。
 勿論、これは大金です。しかし、一人で一度に支払うお金ではありません。大勢で何回にも分けて支払うことにすれば、決して不可能な金額ではありません。そのために、次の4つの方法を「アピール」します。

1)学習コースのプログラムに参加してください

 ここ数年、バッハの森はコンスタントに10のプログラムを開いています。合唱やハンドベルの練習と、いろいろな研究会、それに、パイプオルガンと声楽の個人レッスンがあります。参加者が多くなればなるほど、その参加費から、土地と建物に廻わせる金額も増えます。
 バッハの森から遠方にお住まいの方々には、隔週、木曜日、金曜日、土曜日に集中して開講されるプログラムに、1泊、乃至は、2泊して参加なさることをお勧めします。そのために、バッハの森の宿泊施設をご利用になることができます。

2)コンサートに参加してください

 バッハの森は、少なくとも年4回(3月、5月、6月、12月)、ユニークな教会音楽コンサートとレクチャー・コンサートを開きます。出来る限りご参加ください。参加費から諸経費を除いて余剰金が出れば、建物修繕費用に廻わす金額も増えます。実は、ここ何年か参加者数が少なくて、ほとんど余剰金が出ない状況が続いています。

3)年会費を納入する時にプラス・アルファーをご寄付ください

 このことについては、一昨年から、アピールして参りました。最初の頃は多数の方々が覚えていてくださったのですが、最近は失念なさる方も増えてきました。たとえ少額でも、年会費を振り込む際にアルファーをプラスしてくだされば、それが積もって山になります。

4)賛助会員になってください

 バッハの森の年会費を、維持会員、4000円、賛助会員、13000円と定めてから、10数年間、この金額を据え置いてきました。今のところ、なお据え置くつもりです。ところで、今年の3月11日現在、維持会員は151人、賛助会員は59人いました。これを“普通”のことだと考えたことは一度もありません。“利益”にならないことに、これだけ多数の方々が、毎年会費を払ってくださっていることを、大変嬉しく思い、深い感謝の念と感動を覚えます。
 そこでなおかつ「アピール」するわけですが、さらに多くの皆さんに賛助会員になっていただけないでしょうか。賛助会員1人の経済的貢献は、維持会員3人分以上にあたりますから、賛助会員が増えれば、バッハの森の収入が増えることは明々白々です。
 そこで提案いたします。年会費13000円を一度に払うことが難しい方も、月賦にして1083円 x 12ヶ月+6円なら、何とかなるのではないでしょうか。もっとも、バッハの森はリース会社ではありませんし、ヴォランティアで事務処理を担当していてくださっている、数人の献身的なメンバーに、これ以上の負担をかけるわけにはいきません。ですから、この方式なら賛助会員になれるという方は、毎月、1083円を自分で貯金してください。
 一定の目的のために、少額のお金を定期的に貯めるという行為は、最近、流行らないようですが、バッハの森の土地・建物を維持するためには、この方法が一番確実だと考えています。

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 附記すれば、確かに、すべての建物は手入れをすべき“適齢期”に達していますが、本当にぼろぼろになっているわけではありません。今、すぐ外壁を塗装し、屋根を葺き替えなければ“危険”だというわけでもありません。雨漏りが余りにも激しくなったので、今年初めに、約50万円かけて、あちこちの外壁に鉄板を張り付けました。今のところ雨漏りは止まっています。この様に、お金がなければ、緊急を要する個所のみ修繕していけばいいわけで、残り3棟の外壁塗装と屋根の葺き替えを、一度にしなくても活動を続けることはできます。多分、1棟づつ、3年から5年かけて施工すればいいのではないでしょうか。
 この問題を解決するために、さらに良い提案があれば、是非、教えてください。知恵を出し合って、問題を解決する方法を見つけ出したいものです。これは、20年かけて成長したバッハの森が、必ず解決できる問題だと信じています。知恵もお金も、山になるまで、皆で持ち寄って積み上げようではありませんか。(石田友雄)

日 誌(2005.1.7 - 3.31)

1.7  来訪 田崎瑞博氏(弦楽器奏者)。
1.12 ハンドベル修理 講師:木村栄子氏。参加者6名。
1.14  新年大掃除 参加者10名。運営委員会 参加者6名。
1.15 春のシーズン開始
2.4  運営委員会 参加者6名。
2.16 地震 アーレント・オルガンのパイプ5本外れる。
3.16 来訪 服部哲氏(一色建築設計事務所)。
3.18 運営委員会 参加者6名。
3.19 理事会・評議員会 財団法人・筑波バッハの森文化財団。参加者12名。
3.20 バッハの森創立20周年記念コンサート「受難物語」。参加者33名。

教養音楽鑑賞シリーズ
「J. S. バッハの宗教音楽」

1.15 第131回(エピファニアス/顕現祭)、
 カンタータ「最愛のインマヌエルよ、信仰者の将軍よ」(BWV123);
 オルガン:G. F. カウフマン「麗しきイマヌエルよ」;
 石田一子。参加者:15名。

1.22 第132回(マリア清潔祭)、
 カンタータ「私は満ち足りている」(BWV 82);
 オルガン:J. S. バッハ「平安と喜びをもって我はかなたへ行く」(BWV 616);
 古屋敷由美子。参加者:14名。

1.29 第133回(エストミヒ/五旬節)、
 カンタータ「主イェス・キリストよ、真の人にして神よ」(BWV127);
 オルガン:J. S. バッハ「キリストよ、汝、神の小羊よ」(BWV 619) ;
 金谷尚美。参加者:18名。

2.5 第134回(聖金曜日)、
 マタイ受難曲(1)BWV244 /1〜16;
 オルガン:J. S. バッハ「おぉ、神の小羊、罪なく屠られ」(BWV 618)、
 西澤節子。参加者17名。

2.12 第135回(聖金曜日)、
 マタイ受難曲(2)BWV244 /17〜31;
 オルガン:J. クーナウ「あぁ、主よ、哀れな罪人なる我を」、
 伊藤香苗。参加者:13名。

2.19 第136回(聖金曜日)、
 マタイ受難曲(3)BWV244 /32〜44;
 オルガン:J. S. バッハ「おぉ、人よ、汝の大いなる罪を嘆き悲しめ」(BWV 622)、
 海東俊恵。参加者:13名。

2.26 第137回(聖金曜日)、
 マタイ受難曲(4)BWV 244 /45〜55;
 オルガン:J. S. バッハ「心より愛するイェスよ、汝、いかなる罪を犯せしや」(BWV 1093)、
 石田一子。参加者:17名。

3.5 第138回(聖金曜日)、
 マタイ受難曲(5)BWV244 /56〜70;
 オルガン:D. ブクステフーデ「あぁ、主よ、哀れな罪人なる我を」(BuxWV 178)、
 金谷尚美。
 ハンドベル:石田一子編曲「心よりわれ慕い求む」、
 安積和子、石井和子、石田麻実、伊藤香苗、岩渕倫子、
 熊谷徹、三縄啓子。参加者:17名。

3.12 第139回(聖金曜日)、
 マタイ受難曲(6)BWV244 /71〜78;
 オルガン:D. シュトゥルンク「いかにして我、汝を迎え」、
 海東俊恵。参加者:19名。

3.26 第140回(復活祭第1祝日)、
 カンタータ「天は笑い、地は歓呼する」(BWV 31);
 オルガン: J. M. バッハ「わが終わり迫り」;
 伊藤香苗。参加者:19名。

学習コース

宗教音楽研究会
 1.20/10名、2.17/7名、3.17/7名。

コラール研究会
 1.21/5名、2.4/5名、2.18/6名、
 3.4/6名、3.18/5名。

教養講座:聖書を読む
 1.20/6名、1.27/6名、2.3 /6名、
 2.10/4名、2.17/7名、2.24/5名、
 3.3/6名、3.10/4名、3.17/5名、
 3.24/5名、 3.31/7名。

バロック教会音楽研究会
 1.21/9名、2.4/10名、2.18/10名、
 3.4/9名、3.18/10名。

バッハの森クワイア(混声合唱)
  1.15/16名、1.22/18名、1.29 /18名、
 2.5/18名、2.12/17名、2.19 /15名、
 2.26/17名、3.5/19名、3.12/16名、
 3.19 /19名、3.26/17名。

声楽アンサンブル
  1.15/13名、1.22/12名、1.29/11名、
 2.5/13名、2.12/11名、2.19 /10名、
 2.26/10名、3.5/12名、3.12/11名、
 3.19 /13名、3.26/10名。

バッハの森ハンドベルクワイア
  1.15/6名、1.22/9名、1.29 /8名、
 2.5/10名、2.12/9名、2.19 /7名、
 2.26/6名、3.5/9名、3.12/9名、
 3.19 /9名、3.26/8名。

パイプオルガン教室
  1.7/3名、1.19/3名、1.20/4名、
 1.26/4名、1.27/5名、1.28/4名、
 2.2/2名、2.3/4名、2.9/4名、2.10/5名、
 2.16/2名、2.17/4名、2.23/4名、2.25/2名、
 3.2/4名、3.3/4名、3.9/2名、3.10/5名、
 3.16/4名、3.17/4名、3.23/ 4名、3.24/5名、
 3.30/4名、3.31/4名 。

声楽教室
  1.15/4名、1.21/5名、1.22/4名、1.29 /2名、
 2.4/5名、2.5/6名、2.18/5名、2.19 /6名、
 3.4 /4名、3.12 /4名、3.18/5名、3.26 /4名、
 3.27 /5名。

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寄付者芳名

2004.12.25 - 2005.3.20
 4名の方と学習コース参加者の皆さんから計20,635円のご寄付をいただきました。

建物修繕費用・積立会計
2004.12.25 - 2005.3.25 
 12名の方々から計215,400円のご寄付をいただきました。

地上権積立会計
2004.12.25 - 2005.3.25
 2名の方々から計200,000円のご寄付をいただきました。