*参加者の日記帳 - 教養音楽鑑賞シリーズ (JSB)

2004.10.2(三位一体後第8主日/8. Sonntag nach Trinitatis)
カンタータ:「主なる神が私たちの傍らに留まっていないなら」/“Wo Gott der Herr nicht bei uns haelt”(BWV 178)
コラール:「主、われらと共にいましたまわず」/"Wo Gott der Herr nicht bei uns haelt" (J. Jonas, 1524)
オルガン:H. シャイデマン(?)「同上」1, 2
オルガニスト:石田一子

解説:J. ヨナスのコラールに基づくコラール・カンタータ。ヨナスは、ヴィッテンベルクの宗教改革運動に参加したルターの盟友。このコラールで、キリストの名によって、自分たちを滅ぼそうとする敵の攻撃から守る神の力を信頼して助けを祈る。ヨナスの敵はローマ教会だったが、それから200年後のバッハのカンタータで、敵は「理性」、すなわち、自然科学的真理を絶対の価値として教会の教えを批判した啓蒙思想であった。激しい敵の攻撃にさらされて、切羽詰まった信徒の群れが、必死に祈る戦闘的な雰囲気の音楽である。

2004.9.25(三位一体後第4主日/4. Sonntag nach Trinitatis)
カンタータ:「永遠の愛の憐れみの心よ」/“Barmherziges Herze der ewigen Liebe”(BWV 185)
コラール:「私はあなたを呼ぶ、主イス・キリストよ」/"Ich ruf zu dir, Herr Jesu Christ" (J. Agricola, 1526)
オルガン:J. S. バッハ「同上」(BWV 639);「同上」(BWV 185/6)
オルガニスト:海東俊恵

解説:この日の福音書冒頭の言葉「お前たちの父が憐れみ深いように、お前たちも憐れみ深い者になれ」(ルカによる福音書6章36節)が全曲のテーマ。第1曲の二重唱アリアに終曲のコラール「われ呼ぶ、主イスよ」の旋律がオーボエで重ねられ、神のような憐れみの心を与えたまえ、という祈りがさらに深い祈りになる。二つのレチタテーヴォとアリアが続く。最初は福音書前半、特に「お前たちが量るように、お前たちも量られる」という教えと、天国で豊かな収穫を得る喜びを歌い、次は福音書後半の「隣人の目のちりを除く前に自分の目の丸太を除け」という勧告と、"Das ist der Christen Kunst"「これがキリスト者の技量だ」と繰り返して、具体的な憐れみの行為を数え上げる。

2004.9.18(三位一体後第2主日/2. Sonntag nach Trinitatis)
カンタータ:「天は神の栄光を語り」/“Die Himmel erzaehlen die Ehre Gottes”(BWV 76)
コラール:「われらにみ恵み」/"Es wolle uns Gott gnaedig sein" (M. Luther, 1524);
オルガン:S. シャイト「同上」ー Goerlitzer Tablaturbuch, 1650 より;J. S. バッハ「神よ、あなたに感謝し」(BWV 76/14)
オルガニスト:石田一子

解説:1部7曲、2部7曲、全14曲の大曲。1部はこの主日の福音書により、天の宴会に招待されている人々が、「自分の欲望という最古の偶像」の支配を受けて、宴会出席を断ったことへの反省、2部はこの日の使徒書により「兄弟愛」をテーマにする。冒頭の合唱は、詩篇19篇2, 4節によって、天は神の栄光を語っているのに、言葉がないので人はその声を聴かない、と歌う。神の栄光を理解することの難しさが全曲を通じて響く。特にコラールの旋律は歌いにくい。難しいカンタータでありコラールである。天国の宴会に招かれても、その招待を受けることは本当に難しいことなのだ、というこの主日のテーマに相応しい音楽である。

2004.9.11(三位一体後第1主日/1. Sonntag nach Trinitatis)
カンタータ:「飢えた者にお前のパンを裂き与えよ」/“Brich dem Hungrigen dein Brot”(BWV 39)
コラール:「来たり、主に学べ」/”Kommt, lass euch den Herren lehren" (D. Denicke, 1648); c.f. "Freu dich sehr, o meine Seele" (L. Bourgeois, 1551)
オルガン:G. F. カウフマン「大いに喜べ、わが魂よ」;G. ベーム「同上」
オルガニスト:金谷尚美

解説:聖霊降臨祭の翌週が三位一体祭、その後に続く、22 から 27の主日は、三位一体後 1、2、3、..... と数字で数えられ、この間を「教会の半年」と呼ぶ。この期節のテーマは、教会に集まった信徒が、この世でどのように生きるべきかという教えである。そこで、三位一体後第1主日は、「慈善と施し」を勧める。なお、このカンタータの終曲に選ばれたコラールは、「大いに喜べ、わが魂よ」の旋律を用いた替え歌で、イエスの山上の教えの最初の言葉、8つの「幸いなるかな」を読み込んだ教育歌である。

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